サラリーマンをやりながら公認会計士試験にチャレンジしようと思った時、どうしても気になるのがどれくらい勉強時間が必要なのかという点ではないでしょうか?
この記事はそんな疑問に、社会人でサラリーマンやりながら公認会計士試験に合格した筆者がお答えしたいと思います。
目次はこんな感じです。
では行ってみましょう!
毎日の勉強時間は?
結論から言ってしまいます。人によって違います。
多くの人が「公認会計士試験合格には毎日10時間とか15時間の猛勉強が必要」といった、つらーーいイメージを持っていると思います。
しかし、これは全く間違った受験者像です。特に社会人で受験勉強をする人には全く当てはまりません。
後でご説明しますが、毎日の勉強時間は受験生の能力とか仕事環境、生活環境によってかなり変わってくると思います。また、論文式試験合格という最終ゴールまで自然に勉強を継続することを大前提にした場合、仕事のハンデを負う社会人の1日の勉強時間は傾向として短くなります。
しかし「人によって勉強時間は違うよ」では皆さんの役に立つ情報とは言えないので、筆者の例をご紹介すると、平均で毎日約1.5時間の勉強で合格しました。
※ これはざっくりした計算によるもので、正確にストップウォッチ等で勉強時間を測定した結果ではありませんので、ご了承下さい。
但し、受験勉強開始から間もない頃と、論文式に合格した年の直前期の1日あたり勉強時間は全然違います(受験勉強開始直後の方が短いです)。これを平均して1日あたりに換算したら、約1.5時間という計算です。
意外に短時間と思いましたか?
この理由を説明していきます。
なぜ1日の勉強時間が短いのか?
勉強時間の推移を図示するとイメージして頂きやすいと思いましたので、下のようなグラフを描いてみました。
図の通り、1日の勉強時間は上下動を繰り返しながらゆっくり増加し、論文式試験合格の手前では勉強時間もMAXになり、かつほぼフラットになるような推移でした。
これを平均したのが点線で、1.5時間です。
※ 実際にはこんなに滑らかではなく、もっとギザギザして所々ゼロにもなります。あくまでイメージ図とご理解ください。
なお、途中にある急激な山は、短答式試験直前や論文式試験直前の時期に勉強時間が増えた事を示しています。
この様な推移になった理由を「グラフ前半(勉強開始直後)」と「グラフ後半(論文式合格直前)」に分けて説明します。
グラフ前半(勉強開始直後)の勉強時間が短い理由
- 受験勉強の開始直後は新しい知識に触れるインプットの段階で、作業効率が高くないため、長時間勉強できるだけの集中力を保てなかった
- 通常業務+残業1時間をこなし、帰宅してから勉強に取り掛かる習慣を作るのに時間がかかった
- 自分の中で勉強の重要度ランクが低く、仕事やプライベートの予定が優先してしまっていた
つまり、グラフの前半で勉強時間が短いのは、意図して勉強時間を短く抑えていたという訳ではなく、勉強時間を長くしたくても出来なかったからです。
次に、ある程度勉強を積み上げてきたグラフの後半ではどうでしょうか。
この段階では時間確保の意識とスキルが伴い、また最初の頃と比べて勉強慣れし、勉強内容もアウトプット中心に変わったことから、長時間集中力を維持できる状態になっていました。
グラフ後半(論文式試験合格直前)の勉強時間が長い理由
- 知らない知識のインプットに費やす事ほとんど無くなり、答案を書くためのアウトプットの反復練習が中心のため、やるべき作業が明確で集中力を維持しやすかった
- 仕事後に頭を切替える習慣が確立されており、帰宅中・帰宅後に負担を感じること無く勉強モードにスイッチできるようになっていた
- 勉強が全てに優先するようになり、勉強するために仕事を早く終わらせ、プライベートの予定を作らないようになっていた
またグラフの最後の部分で顕著ですが、試験直前には試験が近いという緊張感からアドレナリンが全開になり、勉強時間は加速的に伸びました。
グラフ後半もグラフ前半と同じで「もっと長時間勉強したる!」と意図して勉強時間が長くなったわけではない、というのがポイントです。
積み上げてきた勉強習慣、復習作業への慣れ、そして試験日が迫っているという締切効果で、自然と勉強時間が長くなったのです。
自分としては試験直前期も無理して勉強していた感覚はありません。実際、平日の仕事がある時でMAX4時間、週末でMAX10時間程度の勉強時間でしたが、そのような勉強時間を連日で継続できたのは最長でも3、4日でした。
このような自然体の勉強時間の平均を取ってみると結果的に一日の勉強時間はかなり短かった、という感じです。
受験勉強に専念している学生とかに比べたら屁みたいな勉強時間だと思います。
しかし逆に言えば、自分が無理なく勉強を継続出来たのは、一日あたりの勉強時間が短かくて負担が少なかったから、という風にも言えるのです。
多分、スタートダッシュを気取って勉強開始直後から「残業終わってから毎日4時間勉強!」とか睡眠時間を削って勉強を始めていたら、1ヶ月と持たずに勉強を辞めていた可能性が高いです。
もちろん、そういう強烈な努力を継続できる人も中にはいるかもしれませんが、私には無理だったと思います。
結論として「なぜ1日の勉強時間が短いのか」という問に対しての私の答えは、
合格できるまで自然に勉強を継続していった結果として、1日あたりの(平均)勉強時間は必然的に短くなったです。
勘の良い方ならもうお分かりかもしれませんが、この結論の裏返しとして、合格するまでの勉強期間はそれなりに長かった、という現実があります。
次に合格までにかかる期間について解説します。
合格までにかかる期間は?
結論、最低でも2年は必要、です。
ただし、私の場合は勉強開始から4年かかりました。
では、なぜ最低でも2年なのか説明していきます。
勉強量の式
ここで、公認会計士試験に合格するために必要な勉強量を分解して、式で表してみたいと思います。その式とは以下のようなものです。
【勉強量】=【勉強密度(学習量/時)】 ✕ 【トータルの勉強時間(時)】
= 【勉強密度(学習量/時)】 ✕ 【1日の勉強時間(時/日)】 ✕ 【勉強期間(日)】
左辺が公認会計士試験合格に必要な勉強の量を表していますが、それを右辺で2つの要素に分解しています。
【トータルの勉強時間】は文字通りの意味で、さらにこれは2つの要素、【1日の勉強時間】と【勉強期間】に分解できます。つまり、
【トータルの勉強時間(時)】 = 【1日の勉強時間(時/日)】 ✕ 【勉強期間(日)】
ですね。
1番めの項の「勉強密度」はちょっと説明が必要かと思いますので、次の節でご説明します。
合格に必要な【勉強量】は全ての受験生で同じ。異なるのは【勉強密度】と【トータルの勉強時間】
左辺の【勉強量】というのは、いわゆる勉強に費やした「時間」のことではありません。
資格系の情報サイトで「合格に必要な学習時間はXXXX時間」とかいう書き方をたまに見かけますが、ここで言う【勉強量】とは表面的な勉強時間ではなく、必要な知識の暗記量・計算問題の捨て問の判別・理論問題の解答を構成する手際etc..といった合格に必要な知識と技の習得度のことです。
筆者の経験から言いますと、合格までの【トータルの勉強時間】は人によって違って然るべきです。
なぜなら、1時間で習得できる知識量は人によって異なるし、同じ人でもその日の集中度合いによって勉強の効率は全く違うからです。
そして、この1時間あたりの勉強の効率を上の式の中では【勉強密度】と呼んでいます。
例でご説明しましょう。公認会計士を目指すAさんとBさんがいます。二人の特徴は以下のとおりです。
ステータス | Aさん | Bさん |
職業 | 無職 | サラリーマン |
活動時間 | 朝9時〜夜12時(自由時間15時間) | 朝6時〜夜12時(自由時間3時間) |
生活 | 実家(母が朝昼晩ご飯を作ってくれる) | 一人暮らし(飯は自炊) |
住環境 | 田舎で静か | 幹線道路沿いマンション2階 |
通勤 | 無し(無職だから) | 往復2時間 |
IQ | 145 | 100 |
スマホ | 持っていない(友達いない) | 会社とプライベート2個持ち(休日も会社スマホから連絡がある) |
Aさんは無職で朝から晩まで自由時間です。ご飯はお母さんが作ってくれるので、自分で作る必要も外食の必要もありません。住環境はとても静かな山林の中で、連絡を取り合う相手もいないのでスマホを持っていません。そして、Aさんは実は生まれながらの天才でIQが常人よりも高く、本のページを一瞬で写真のように記憶でき、また細部に書かれている言葉まで正確に再現できる特集能力を持っています。
一方、Bさんは普通のサラリーマンで、自由になる時間は業務時間と往復の通勤時間を除いて1日3時間くらいしかありません。また部屋は幹線道路沿いのために常に大型トラックの走行音が聞こえます。スマホは2個持っていて、プライベート用には友人や彼女から、仕事用には会社から平日休日関係なく連絡が来ます。BさんのIQは100と平均値ジャストで、特に特技はありません。
さて、AさんとBさんが同じ時間だけ勉強したとして、どちらがより多くの知識や技術を習得できそうでしょうか?
当然Aさんですよね。
Bさんは仕事と通勤で疲れ切った後にしか勉強できません。また勉強中にも有無を言わさず彼女からしゅぽっとLINEに今日会社で起こったことの報告メッセージ(返信必須)が送られてきます。暗記は小学校の時から苦手で教科書に書いてあることを暗記させる教育は、子供の創造性を破壊していると思います!とかなんとか、小学校で意見作文を書いたこともあるくらいです。
Bさんは同じ1時間の勉強でも知識の暗記量も計算問題の手順を覚えるスピードもAさんの半分以下になるでしょう。
これがAさんとBさんの【勉強密度】の差です。
Bさんの【勉強密度】はAさんの半分以下なので、Bさんが合格までに必要な勉強量をこなすにはトータルの勉強時間がAさんの2倍必要になります。
これが
【勉強量】 = 【勉強密度(学習量/時)】 ✕ 【トータルの勉強時間(時)】
という式の意味するところです。
つまり、AさんもBさんも合格のためにこなすべき勉強量は同じなんです。ですが、それぞれの境遇や能力の違いにより【勉強密度】が異なるため、【トータルの勉強時間】もそれぞれ異なる、ということです。
社会人合格までに最低でも2年必要な理由
BさんはAさんに比べて【勉強密度】が低いため、【トータルの勉強時間】が多くなってしまうことを上で説明しました。
仮にAさんとBさんの【勉強密度】が同じだったとしても、Bさんは仕事と通勤があるため、1日あたり勉強に使える自由時間はAさんに比べて短くなります。
【トータルの勉強時間(時)】 = 【1日の勉強時間(時/日)】 ✕ 【勉強期間(日)】
AさんとBさんの【勉強密度】が同じと仮定した場合に、上の式でAさんとBさんを比較すると、Bさんは【1日の勉強時間】の上限が3時間程度のため、Aさんの【1日の勉強時間】(=15時間)の5分の1です。
Aさんが合格までに丁度1年かかったとしたら、Bさんはその5倍の5年かかる、ということになります。
さて、社会人合格には最低2年かかると言ったのは、筆者の例から計算した推定値です。
筆者の場合は以下のように計算できます。
【勉強密度】 | 数値化できないが、仮に「10」と置く |
【1日の勉強時間】 | 1.5時間 / 日 |
【勉強期間】 | 1460日(=4年✕365日) |
【勉強量】 | 21900(=10✕1.5✕1460) |
21900というのが公認会計士試験合格に必要な勉強量で、これは全受験生に共通の量です。(専門科目選択の違いにより多少の幅はありますが)
さて、AさんとBさんの【勉強密度】は2倍異なる、という前提で例を説明しましたが、計算の基準となっている筆者は特に高IQでも、時間に恵まれた人間でもありませんでした。従って、ごく普通のサラリーマンと筆者の勉強密度の差は殆ど無い、と言って差し支えないと考えます。
そこで、コントロール可能な要因として差が生じるのは【1日の勉強時間】になります。(【勉強期間】は【勉強密度】と【1日の勉強時間】が決まると自動的に確定する為、コントロール不可能な要因です。)
ごく普通のサラリーマンをやっていると【1日の勉強時間】は業務+通勤+食事・風呂・睡眠、で消費した後に残された可処分時間から捻出するしかありません。
早くて夜7時、遅くて夜10時(平均8時)に帰宅し、飯を食って風呂に入って洗濯物を片付けてといった家事を1時間でこなして、夜12時に寝るとした場合、可処分時間は大体3時間くらいが相場だと思います。
この時間を最大限使ったとしても【1日の勉強時間】は1.5時間の2倍の3時間程度が限界になります。(短期的には睡眠を削る等して4時間、5時間に増やせるかもしれませんが、継続はできません。)
そして、現実には仕事の疲れやらプライベートの諸事情で、継続して3時間を丸々勉強に充てることは困難です。
また、週末や休日をフルに勉強に充てるとしても、勉強開始から間もない頃は集中が切れやすいので、ぶっ続け長時間の勉強を毎週行うのはかなり困難です。
こういった事情から、サラリーマンが合格までに必要な【勉強期間】は、どう頑張っても筆者の半分、つまり2年程度までしか短縮はできないだろう、ということです。
中には常人離れした【勉強密度】を維持できる方、あるいは短時間睡眠で【1日の勉強時間】を継続して増やすことができる方もまれに存在するかもしれませんが、それは私を含めた大勢の「普通のサラリーマン」には当てはまりません。
なので、結論としては、公認会計士試験の合格には最低でも2年は必要なのです。
筆者が合格までにかかった4年の流れ
筆者が公認会計士試験に合格するまでの4年間の過程をご紹介します。
1年目(2012年10月に勉強開始) | 簿記2級合格レベルの知識からスタート
受験予備校の通信教材の入門講座を購入し、DVDを見ながらテキストをひたすら読みすすめる。
2012年12月の短答式を全く準備なしで受験。当然不合格。
初めて勉強する会社法と監査論に関しては、授業がつまらなすぎて勉強が全くすすまない状態が半年くらい続く。
2013年5月の短答式も一応知識を詰めてからトライするも、不合格。 |
2年目 | 2013年12月の短答式までに全4科目のテキストは一通り一巡したが、短答式は不合格。
この辺りから、徐々にインプットに割く時間の割合が下がりはじめ、短答式答練の反復練習に取り掛かるようになる。
2014年5月の短答式まで答練と予備校模試の2回分の復習を繰り返す。全科目で、知らない or 知っていたが忘れている知識が多い。
徐々に手応えを感じ始めるが、財務会計の理論と管理会計の計算に穴が多く、2014年5月短答式は不合格。 |
3年目 | ひたすら答練と短答式過去問・模試の復習を繰返し、2014年12月の短答式合格。
合格の通知とほぼ同時に海外から本社へ帰任を命じられ、同時に未経験の部門への配属となる。帰国と未経験業務でバタバタ。
2015年4月から論文式試験の準備を開始するも、論述に必要な知識と短答式の知識とのギャップに絶望する。さらに租税法追加の追い打ち。統計学の計算問題が唯一の心のオアシスとなる。
2015年8月の論文式は全科目準備不足で不合格。科目合格も無し。不合格通知の11月から12月までしばらく勉強ストップ。 |
4年目 | 帰国したメリットを最大限に活かすため、2016年1月辺りから予備校の答練シリーズに教室参加。この辺りから予備校通い+自習室利用を開始する。
仕事後と週末に水道橋に通い、答練の解答の暗記を論文知識のインプットと位置づけ、復習を繰り返す。
大手予備校3校の模試に全てリアルタイム参加し、経験値アップを狙うが、合否ライン辺りをウロウロする成績が続く。
結局模試で良い成果を出すこと無く、2016年6月以降はひたすらこれまでに受けた答練と模試で出た論点を復習する作業サイクルに入る。この時点でも理論問題に関しては全科目で知らない論点がポツポツある状態。
模試で登場した新しい知識は、解答を暗記することでインプットしていく工程を繰り返す。
2016年8月論文式試験受験し、同年11月合格。 |
こんな感じになります。ちなみに、2015年3月まで海外勤務だったため、短答式試験の度に休暇を取って帰国して受験をしていました。
今考えても、学生受験生達に比べれば相当なハンデを背負いながら勉強していたと思います。でも、結果として4年で合格できたのです。
まとめ
最後にまとめです。社会人受験生が公認会計士試験に合格するのに必要な勉強時間は
- 人によって異なる。しかし、
- 勉強密度が高い人、または勉強を長く継続できる人(勉強期間が長い人)は1日の勉強時間は短くて良い。
今回は以上になります。この記事が参考になれば幸いです。